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【初心者小説】死にたい日記〜1〜

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"Yuuyake" by Σ64 - Σ64. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ.



コンビニのベンチによっこら聖闘士星矢と座り、今さっき買った氷菓を袋から出してかじった。かじった瞬間、知覚過敏に滲みたがいつものこと。口の中でゆっくりと溶かしながら一口目を食べ終えた。食べ慣れた味だから感想も何もない。無の境地で二口目をかじった。また少し滲みた。舌で氷菓を転がしながらぼんやりと上の方向をみると、空がオレンジ色に染まっていて、不安定な線の飛行機雲がみえた。三口目を口に運ぶ前に、氷菓を数秒じっとみつめて思った。

「この氷菓を喉に詰まらせて死んでやろうか」

もちろん、こんな溶けかけの氷菓を喉に詰まらせたぐらいで死ねるはずがないのはわかっている。しかし、衝動的に、今すぐに、この世から消えてしまいたいと思ったのだ。手に持っているのは、この物体でなければ到底食べたいとは思わないであろうビニールシートのような青色の氷菓。こいつを喉に詰まらせて死ぬ。喉の壁にある皮に氷菓をひっつかせ、そのまま窒息して死に至る。THE END。まあ、無理な話か……。
氷菓を食べて唇の皮を剥ぎ取られるとか、唇に氷菓がくっついて取れなくなるとか、そういった現象は夏には起きない。冬だ。冬だけに、乾燥して寒い冬だけに生じる大獄現象だ。夕方になってもまだ30度以上もある真夏に、氷菓で自殺できる可能性は限りなくゼロに近いのだ。無念の極みである。

それでもああ、死にたい。消え去りたい。

ジーシシシシ、ミーシシシ、と鳴くひぐらしの声がけたたましい。いったいどこから聞こえているのだろう。辺りを見渡しても蝉がくっつくような木はどこにもない。ともかく煩い。しかしそれ以上に騒がしくて癪なのが、すぐそこにタムロしているF田高校の野球部7〜8人だ。目を合わせたくないので飛行機雲を見ているふりをしていたが、ずっと空ばかりみているのも不自然だ。そう思って足元でひからびているみみずをみたり、脚を組み替えてみたりする、私が、ここに、いる。
ベンチに座る私から二百三十センチほど先が自転車置き場になっている。そこで自転車にまたがったまま、部活の愚痴なのだろう、ああでもない、こうでもないとだべっている野球部の連中。こいつらは三十分はここに居座る。高校生の行動パターンなんてお見通しだ。お見通し。私より後から来て買い物もまだしていないくせに、タムロして、私を萎縮させるのだ。こういった集団は嫌いだ。集団でいるときだけ強気になる声のでかい連中が心底嫌いだ。

死にたい。全部まとめて……死にたい。死にたいからそのチャリで轢いてくれないか。そう思った瞬間、最後の二口三口分の氷菓がコンクリートの上に落ちて溶けた。野球部連中の誰かが「あ」といった。

家に帰った。水道の蛇口をひねってコップに水を汲んで飲んだ。気温のせいでお湯が出てきた。わかっていたことだが畜生だな、と思った。
帰り道のことはよく覚えていない。何かを考えながら歩いてきたのだろうが思い出せない。イライラと、ただイライラとしていた。脳みそがグラグラと煮えたぎっているようだった。目の前が白く光りチカチカとして、足元はふわふわと浮いたような感覚だった。車道に飛び出してやろうかと思った記憶もある。でも、毎度のことながら、飛び出さずに家に帰ってきていた。

時々こうして、衝動的に死にたくなってしまう。さっきのコンビニで死にたくなったのは、コンビニ店員があまりにも模範的で、気持ちのいいと言われる、心底気持ちの悪い接客を私に施したからであった。

「お待ちのお客様、こちらへどうぞ!」
「ポイントカードはお持ちですか?」
「袋はご利用ですか?」
「100円、お預かりいたします」

サッサッと動き、テキパキとお釣りを返す。レシートを後から渡す。私が小銭とレシートを財布にしまうのを確認し、「ありがとうございました〜。お待ちのお客様どうぞ〜!」と次の客を誘導し、私を外に追いやる。この完璧であるはずの一連の流れが、完璧すぎるあまりに、完璧主義者である私の自律神経に乱れを生じさせたのだった。同時に、自分がベルトコンベヤーに乗ったコンビニ弁当のようだとも思った。コンビニのドアを出れば私は出荷されるのだ。ドナドナドーナ、ボケナスが。

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